スノーボード、おもろいやん。
最初はばかにしていました。変な髪の若造が、作業用のジャンパー着てやる、一時的な流行りだろうと思ってました。興味があるくせに。
ところが、うちにアルバイトが来たんです。二十うん才でフリーターと言う、ボーダーの女の子です。
二十うん才でフリーターと言うだけあって、うまいんです、ボードが。大好きみたいなんです。
そこで、若い女の子に鼻の下伸ばして、
「おれも前からボードやって見たかったんや、ほんまやでぇ」などと、調子ぶっこいてたんです。
「へぇ、すごいすごい。ぜひ、やってみて下さいよ。おじさんなんて、自分で想う人がおじさんなんだから」向こうも調子よく、会話を弾ませているうちに、ボードを買うしか無くなったんです。抜き差しならない、って奴。
まあ、いいや。買ったって。使わないでもレンタルにすれば。って、安易に考えて、買いに行きました。一番安い奴を。真剣に選ぶ振りして、ただ、値段だけ見て買ったんです。
今から思えば甘かった。それで済む訳はない。連日、
「せっかく買ったんだから、早くいきましょ。まさか、やんないつもりじゃ無いですよね」なんて 責められて、ついに、行くことになってしまったんです。
それでも、まだ甘かった。ボードなんて簡単だと思っていたんです。スキーやってたし、ちょちょいのちょい、って滑れるだろうと思ってました。いきなり、緩斜面でなら、緩ーいターンなんか描きながら降りてきて、
「なーんや、簡単やん。やっぱり大人はスキーやな。この遊びはもう、ええわ」って。
ところが、粉微塵。私のプライドが。しゃがめない。板、履けない。起き上がれない。
ドッタンバッタンこけて、もがいて、やっと少し滑ったら逆エッジでズッダーン。逆エッジ。信じられやんで、こう言うの。どうしたらええの。こわいよー。後頭部強打して、意識が遠のきかけた。死ぬかな。
リフト一本で逃げるように帰ってきました。
「ええーっ。信じられない!!もう、帰るんですかぁ。マッじですかー!」後ろから、きっつーいお言葉が追って来ていました。
それからです。私の心のどこか、奥の方で眠りかけていた、何かに火がついたのは。毎日、ボードしに行きました。
スキーウェアーで、でぶでぶのおじさんがボード担いで歩いたんです。結構、恥ずかしいシーンです。でも、あまり、気にならなかった。
なんか、すっごい悔しかった。ほんで、なんやら、えらい面白かった。
気が付いたら、スノーボードにはまってました。スキーはそれ以来、したこともない。
何週間か後、最初の頃、緩斜面の僅かな窪地に、吹きだまりにたまる落ち葉のように、一緒に転げ落ちていた見知らぬおじさん達と共に、私は山頂に立ってました。
久しぶりに面白い遊びに出会いました。良かった。スノーボードの神よ、始める前の不埒な私をお許し下さい。
懺悔のしるしに今は息子にもスノーボードを教えています。
年齢に関係なく楽しめるスポーツ、スノーボード。最初はちょっと痛いけど、ほんとに最高です。
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